大久保 健一講師 Ken-ichi Okubo
教員紹介

研究キーワード
カオス理論、 エルゴード理論、 非線形力学、 カオス遷移、 無限測度、 省エネ計算と人工知能
研究内容
コーヒーに垂らしたミルクがどんな軌跡を描いても、やがて一色になる──この「必ず同じ結果に落ち着く不思議」を数式で解き明かすのが私の仕事です。まず、混ざり方のルールを無限に作り出し、どれを選んでも 「混ざりきる直前の振る舞い」が同じ法則に従うことを証明しました。 さらに、一見すると時間を逆にできるはずの仕組みであっても、実際には一方向にしか進めない“時間の矢”が自然に現れる現象についても研究を行っています。 これらの研究では、一見乱雑に見える動きも長い目で見れば整った統計法則に従うことを示し、一本の軌道の乱れを統計的にとらえるカオス研究の醍醐味を追求しています。 最近はこの知見を人工知能の学習や新しい計算方法に応用し、複雑な問題を効率よく解くしくみづくりに挑戦しています。
研究から広がる未来
混ざり方の普遍法則がわかると、洪水・株価急変・交通渋滞など、突然起こる大きな変動をあらかじめ評価できる手がかりになります。 また、乱れを巧みに利用することで「迷路を最短で抜ける」「膨大な候補から最適解を素早く探す」といった計算が省エネルギーで可能になります。 私は、カオスの中に潜む秩序を数理的に整理し、それを人工知能の学習アルゴリズムや高速シミュレーションに組み込むことで、 計算資源を大幅に節約しながら高精度の予測や最適化を実現する未来を描いています。 地球環境への負荷を減らしつつ、災害対策・金融リスク管理・スマートインフラ設計など、多様な分野で役立つ技術へと発展させることが目標です。
メッセージ
ぐちゃぐちゃ動くものにも、実は共通のルールがあります。必要なのは難しい公式より「なぜ混ざるのか?」と問い続ける好奇心。
数式はその答えをくれる道具にすぎません。身近な現象を観察し、疑問を持ち、数理で確かめる――その楽しさを一緒に味わいましょう。
複雑さの中に秩序を見つける旅が、次世代の科学や技術を生み出す力になります。