山ノ内 雄渉助教 Takeru Yamanouchi
教員紹介

研究キーワード
分子シミュレーション、計算物理学、磁性粒子サスペンション、機能性流体
研究内容
私は主に磁性粒子サスペンションと呼ばれる流体を対象とした研究を行っています。磁性粒子サスペンションとは、磁性粒子と呼ばれる磁場に反応する微細な粒子を水や油などの母液中に分散させることによって構成されている機能性流体です。近年では、この磁性粒子サスペンションを応用した排水処理技術の開発や薬剤療法の構築に関する研究が進められています。上記の研究を進める上で、磁性粒子サスペンションに対して磁場を印加した際の母液中における磁性粒子の動的特性や挙動を解析する必要があります。しかしながら、対象とする磁性粒子は、直径がナノメートルオーダーほどの非常に微細な粒子であるため、実験的研究でそれらの粒子の運動を解析することは非常に困難です。このような課題解決に向けて、私は分子シミュレーションを用いて外部磁場に対する磁性粒子の運動を数値的に解析する研究を行っています。また近年では、棒状やキューブ状などの様々な形状を有する磁性粒子の調製が可能となっています。以上の背景から、粒子形状が外部磁場に対する磁性粒子の運動や動的特性に及ぼす影響について着目した研究に現在取り組んでいます。
研究から広がる未来
近年では、磁性粒子サスペンションを応用した薬剤療法の構築を目標とした研究が進められています。この薬剤療法は、磁性粒子が外部磁場によって引き付けられる現象を利用して、体内の患部に対して薬剤を集中的に投与することを目的として考案されました。具体的には、表面に薬剤を被覆させた磁性粒子を血管内へと注入し、体外から患部に対して磁場を印加します。血管内を流れる磁性粒子が外部磁場によって引き付けられることにより、標的とする患部周辺に対して薬剤を集中的に投与することができると考えられています。また、この薬剤療法を抗がん剤治療などへと適用することにより、人体に対する副作用を軽減することができると期待されています。人体へと投与することを目的とした磁性粒子の合成に関する研究は非常に多く行われているのに対して、血管内を流れる磁性粒子の運動解析や外部磁場に対する動的特性の評価に関する研究は活発に進められていません。このように、実験的研究では解析・検討が困難な課題に対してシミュレーションを用いて取り組むことにより、今後の工学技術の発展へ貢献できると考えられます。
メッセージ
私が取り組んでいるシミュレーション的研究は、学生の皆さんがこれまでに学んできた数学・物理学を応用させた研究分野です。シミュレーションに必要なプログラム・コードの作成に加えて、プログラム作成の基盤となる基礎方程式の構築などもすべて研究活動の一環として取り組んでいます。プログラミングに興味のある方、または数値計算に関心のある方など、私の研究活動に少しでも興味を持っていただければ幸いです。