中島 拓准教授 Tac Nakajima
教員紹介

研究キーワード
宇宙電波天文学、 電波工学、 超伝導デバイス、 ヘテロダイン受信機、 電波望遠鏡、 活動銀河核、 超巨大ブラックホール、 星間化学
研究内容
ある種の気相の分子は、回転遷移によって電波を放射することが知られています。その周波数は分子種によって異なりますが、主にミリ波・サブミリ波・テラヘルツ波と呼ばれる周波数30 GHz以上(波長10 mm以下)の高周波の電波領域に輝線スペクトルとして観測されます。このような電波を地上で受信し解析することで、遠い宇宙にある天体や地球の高層の大気などを遠隔観測することが可能です。ただし、分子スペクトルの信号強度はとても微弱なので、超高感度な受信機が必要となります。私たちは、超伝導体を用いた高感度・低損失な検出器や伝送路を設計・開発し、宇宙電波望遠鏡や、地球の大気環境を監視するラジオメータへの応用を行っています。さらに、自分たちで開発した機器を用いて、星間ガス中での次世代の星の形成過程の解明、爆発的星形成や超巨大ブラックホールを熱源とする活動的な銀河の物理・化学環境の解明という宇宙科学研究にも取り組んでいます。
研究から広がる未来
いま、世界情勢はますます複雑化し、不安定な時代となっています。日進月歩の著しい技術発展は、私たちの暮らしや社会だけでなく、モノの見方や考え方をも大きく変化させ続けており、未来を見極めることも難しい状況にあります。その中で、常に不変かつ基盤となっているのは基礎科学(理学)です。天文学の研究は、私たちの暮らしをすぐに豊かにするものではありませんが、人類がどこからやってきてどこに向かうのかという根源的な問いを探求し、「地球」という小さな惑星の上にいる私たちという存在を理解させてくれるものです。人類だからこそ可能な「科学的探究」を続けることは、必ず人類の拠り所となるものであり、私たち科学者には次代にそのバトンを渡す責務があると考えています。本学での研究を通じ、古代から蓄積されてきた人類の共通財産である理学的見地を基盤に、工学的応用によって今を生きる我々と未来の社会に貢献することを目指しています。
研究室の様子
本研究室は、2025年度にスタートした新しい研究室です。「テラヘルツ波を科学する・テラヘルツ波で科学する」をキーワードに、人類未踏の電磁波領域である「テラヘルツ波帯」の技術開拓と、その科学応用をテーマに研究に取り組んでいます。
学生はもちろん全員が工学部の所属ですが、研究テーマは宇宙電波望遠鏡を使って観測したデータを解析する理学的研究と、高周波電波の新規デバイス開発やシステム応用という工学的(ものづくり)研究が半々ぐらいになっています。天文学者は自分が使う望遠鏡(装置)のことを知り尽くしている必要がありますし、技術者は自分が作る装置が何に使われるのか、そのためにどういう仕様の装置が求められているかを理解しておく必要があります。本研究室では理学・工学に分かれるのではなく、既存の分野を横断・融合するような学際的な視点で研究に取り組んでいます。
メッセージ
堅苦しいことを色々と書いていますが、スタートは「星を見るのが好き!」ということと、「電波って(便利に使っているけど)不思議だな…」という好奇心です。星・宇宙・電波というキーワードに興味があれば、この大学で一緒に研究をしてみませんか? 国公立大学で最も標高が高い(=宇宙に一番近い)本学キャンパスは、星がきれいで宇宙を研究する絶好の環境です。長野県内には、国立天文台や宇宙航空研究開発機構(JAXA)の研究施設があり、「長野県は宇宙県」というキャッチフレーズの下に連携して研究を行っています。
ものづくりの面では、超伝導、高真空、極低温、金属精密加工、電磁界解析などの技術を最先端の科学計測装置向けに応用して研究を行っています。関連技術をお持ちの地元のメーカー様や、県内外の企業様との共同研究にも積極的に取り組みたいと考えています。
リンク
研究室のホームページはこちら
テラヘルツ波科学研究室(中島研究室)